パニック障害とは

パニック障害は不安障害の一つで、突然の不安、動悸、息苦しさ、めまいなどの症状が出現し、「このままでは自分は死んでしまうのでは」「これ以上ひどくなると頭がおかしくなるのでは」という恐怖感を伴う疾患です。
身体的な異常や不安になる原因がないにも関わらず出現するため、患者さんは「いつまたあの発作が起こるのだろうか」という予期不安に悩まされます。

パニック障害の例

症例: 24歳 女性
家族歴: 特記なし
病歴: デパートで買い物をしている最中、突然動悸と強い不安感を感じた。呼吸も荒くなり、「呼吸ができずに死ぬのでは」という恐怖心で頭がいっぱいになった。症状は10分以上続き、1時間もすれば自然と落ち着いた。その日を境に、人ごみや乗り物(バス・電車)でも同様の発作を経験するようになった。突然の動悸・過呼吸について内科を受診したが異常はなく、精神をすすめられ当院を受診した。

【診断基準】
パニック症/パニック障害
DSMコード 300.01(ICDコード F41)

A.繰り返される予期しないパニック発作。パニック発作とは、突然、激しい恐怖または強烈な不快感の高まりが数分以内でピークに達し、その時間内に、以下の症状のうち4つ(またはそれ以上)が起こる。
注:突然の高まりは、平穏状態、または不安状態から起こりうる。

 1.動機、心悸亢進、または心拍数の増加
 2.発汗
 3.身震いまたは震え
 4.息切れ感または息苦しさ
 5.窒息感
 6.胸痛または胸部の不快感
 7.嘔気または腹部の不快感
 8.めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、または気が遠くなる感じ
 9.寒気または熱感
 10.異常感覚(感覚麻痺またはうずき感)
 11.現実感消失(現実ではない感じ)または離人感(自分自身から離脱している)
 12.抑制力を失うまたは“どうかなってしまう”ことに対する恐怖
 13.死ぬことに対する恐怖
注:文化特有の症状(例:耳鳴り、首の痛み、頭痛、抑制を失っての叫びまたは号泣)がみられることもある。この症状は、必要な4つの異常の1つと数えるべきではない。

B.発作のうちの少なくとも1つは、以下に述べる1つまたは両者が1ヵ月(またはそれ以上)続いている。

 1.さらなるパニック発作またはその結果について持続的な懸念または心配(例:抑制力を失う、心臓発作が起こる、“どうかなってしまう”)。
 2.発作に関連した行動の意味のある不適応的変化(例:運動や不慣れな状況を回避するといった、パニック発作を避けるような行動)。

C.その障害は、物質の生理学的作用(例:乱用薬物、医薬品)、または他の医学的疾患(例:甲状腺機能亢進症、心肺疾患)によるものではない。

D.その障害は、他の精神疾患によってうまく説明されない(例:パニック発作が生じる状況は、社交不安症の場合のように、恐怖する社交的状況に反応して生じたものではない:限局性恐怖症のように、限定された恐怖対象または状況に反応して生じたものではない:強迫症のように、強迫観念に反応して生じたものではない:心的外傷後ストレス障害のように、外傷的出来事を想起するものに反応して生じたものではない:または、分離不安症のように、愛着対象からの分離に反応して生じたものではない)。

(引用)American Psychiatric Association. Panic Disorder. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (DSM-5), 5th ed. Washington, DC: American Psychiatric Association, 2013:208-214.

治療法

パニック障害は、薬物療法と精神療法(暴露療法、認知行動療法)によって治療します。
薬物療法のファーストチョイスとしてはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)が用いられており、本邦ではパロキセチンとセルトラリンの2剤が保険適応となっています。
暴露療法はパニック発作がおこるシチュエーション(人ごみ、電車内など)にあえて身を置き、不安と向き合うことでパニック発作に対する免疫をつける方法です。
認知行動療法では「破局的認知」と呼ばれるパニック障害に特徴的な認知の歪みをターゲットに治療を行います。
薬物療法と精神療法の組み合わせはそれぞれの単独療法よりも効果的と言われています。