先日、当院にてスタッフを対象とした認知症看護研修を開催しました。
今回は、肥前精神医療センター精神科救急病棟 看護師長(認知症看護認定看護師)の藤本亮一 氏をお迎えし、「精神科病棟における認知症看護の展開 ~ストレングスに焦点をあて、認知症のひとの尊厳を守るケア~」をテーマにご講義いただきました。

■ 研修の背景と目的
認知症ケアは、患者様の尊厳を守り、その人らしい生活を支えるために欠かせない取り組みです。
精神科の現場では、病状の安定や自立を目指す「治療管理モデル(治すケア)」と、その人らしい暮らしや安心感を大切にする「生活受容モデル(支えるケア)」の間で臨床的ジレンマが生じることがあります。そのため、職員一人ひとりが共通の視点を持ち、患者様と向き合うことが重要です。
今回の研修では、患者様の強みに焦点を当てる「ストレングスアプローチ」や、認知症のある方の尊厳を守るための具体的なケアについて、豊富な実践事例を交えながらご講義いただきました。

■ 講義のハイライト:「正しさより、物語の共有を」
講義の中で特に印象的だったのは、「正しさより、物語の共有がケアの出口となる」という言葉でした。
認知症による記憶の誤認に対して事実を修正したり否定したりするのではなく、その背景にある思いや不安、その人が歩んできた人生や価値観に目を向けることの大切さを学びました。情報の正誤に固執するのではなく、その方の世界観を理解し共有することが、安心感や信頼関係につながることを改めて実感しました。

■ 研修で学んだ内容
研修では、以下のような実践的な内容について学びました。
✅ 「正しさ」より「その人らしさ」を大切にする関わり方
✅ 患者様の強みや笑顔を活かす「1日1笑プラン」
✅ BPSD(行動・心理症状)の背景要因を考える「氷山の一角モデル」
✅ 感情の記憶や羞恥心への配慮の重要性
✅ ユマニチュード®の4つの柱(見る・話す・触れる・立つ)
✅ 患者様・ご家族と協働した安全と尊厳の両立
✅ 身体拘束最小化に向けた取り組みと実践

今回の研修では、病気やできないことに着目するのではなく、その方の強みや可能性を活かす「ストレングスの視点」の重要性について改めて考える機会となりました。
特に印象的だったのは、「安全を守ること」と「尊厳を守ること」は決して対立するものではなく、私たちの工夫や関わりによって両立を目指すことができるというお話です。
転倒予防や事故防止のために管理的な関わりになりがちな場面でも、その方らしさや意思を尊重しながら支援することの大切さを学びました。
また、患者様・利用者様にかける一言や日々のケアの積み重ねが、その方の尊厳を守ることにつながることを改めて認識する機会となりました。

研修終了後には藤本先生を囲んで懇親会を開催しました。
講義の内容をさらに深める質問や日頃の認知症ケアに関する相談が活発に行われ、精神科看護認定看護師 笹原智美さんにも同席頂き、終始和やかな雰囲気の中で交流を深めることができました。
現場での実践経験や認知症ケアに対する思いを直接伺うことができ、参加した職員にとって非常に有意義な時間となりました。職種や部署を超えて学びを共有する機会となり、今後のケアの質向上につながる貴重な交流の場となりました。

■ 今後の取り組み
今回の研修を通して、職員一人ひとりが認知症看護の基本を再確認するとともに、「失われた機能」ではなく「今も息づくその人らしさ」に目を向けることの大切さを学ぶことができました。
当院では今後も継続的な研修を実施し、患者様や利用者様が安心して自分らしく生活できる環境づくりに努めてまいります。

藤本亮一先生、この度は貴重なご講義ならびに懇親会での交流の機会をいただき、誠にありがとうございました。