適応障害とは

適応障害ははっきりと確認できる「ストレス因」が原因で心身に不調をきたすことです。原因とは、失恋・離婚・ハラスメントのような人間関係、受験や定期的テストのような学業に関すること、地震や水害などの自然災害、病気やケガなどの健康上の問題などがきっかけとなりますが、うつ病やその他の精神疾患の診断基準を満たすほど重篤ではないという特徴があります。

適応障害の例

症例:26歳 男性
家族歴:特記なし
病歴:同胞2人の第1子。元来健康。出生発育に異常なし。大学卒業後、地方公務員として就職。最初の数年は職場の上司も優しく問題なく過ごせていたが、X年4月別の部署に異動となる。新しい部署の上司は相談しにくい雰囲気であり、また自身もサブリーダーとして後輩を指導する立場になった。仕事上わからないことも上司に相談できず、また業務上ミスが目立つようになった。X年5月の連休明けから寝入が悪くなり遅いときは午前2時をまわることもあった。疲れた表情を見かねた同僚から「病院にいってみたら?」と勧められ、当院受診に至った。

【診断基準】
適応障害
DSMコード無し(ICDコード F43.2)

A.はっきりと確認できるストレス因に反応して、そのストレス因の始まりから3ヵ月以内に情動面または行動面の症状が出現。

B.これらの症状や行動は臨床的に意味のあるもので、それは以下のうち1つまたは両方の証拠がある。

 1.症状の重症度や表現型に影響を与えうる外的文脈や文化的要因を考慮に入れても、そのストレス因に不釣り合いな程度や強度をもつ著しい苦痛。
 2.社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の重大な障害。

C.そのストレス関連障害は他の精神疾患の基準を満たしていないし、すでに存在している精神疾患の単なる悪化でもない。

D.その症状は正常の死別反応を示すものではない。

E.そのストレス因、またはその結果がひとたび終結すると、症状がその後さらに6ヵ月以上持続することはない。

(引用)American Psychiatric Association. Adjustment Disorder. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (DSM-5), 5th ed. Washington, DC: American Psychiatric Association, 2013:286-289.

治療法

適応障害の治療は基本的にはストレスとなる要因を取り除くことです。例えば【適応障害の例】で紹介したケースは上司と相談するような機会をもうける、業務量の軽減などをすることで症状は消退することが多いのですが、補助的に睡眠薬や抗不安薬を使用することもあります。
しかし、ストレス要因が取り除かれない場合、うつ病や不安障害に発展する場合もあるため、なるべく早めの対応が必要と思います。