不安障害とは

広い意味での不安障害はパニック障害、強迫性障害などを含みますが、ここでは「全般性不安障害」に焦点をあてて説明します。
全般性不安障害とは、日常生活に関連したさまざまな事柄についての、漠然とした制御不能な不安や心配が長期間(6か月以上)にわたって持続することが特徴です。不安感に加え、集中困難、易疲労性、イライラ、緊張、睡眠障害なども伴うことがあります。

全般性不安障害の例

症例: 30歳 女性
家族歴: 特記なし
病歴: 幼少のころから引っ込み思案で心配性な性格ではあった。中学・高校時代はテストでよい点がとれるか心配で、定期テスト開始から1か月以上前から準備をしていた。25歳で結婚し一児をもうけるが、子供の些細な症状を心配して毎日のように小児科に連れて行った。X年3月遠方で大地震が起こった。被害状況をTV見て、「このままでは地震に巻き込まれるのでは」と強い不安に駆られ、食料やトイレットペーパーを備蓄したり、疎開先を探し始めたりした。地震に対する不安は長らく続き、夜も睡眠中に地震が起こることを心配して眠れない日が増えた。X+1年1月、不眠と不安感を主訴に当院を受診した。

【診断基準】
全般性不安障害
DSMコード 300.02(ICDコード F41.1)

A.(仕事や学業などの)多数の出来事または活動についての過剰な不安と心配(予期憂慮)が、起こる日のほうが起こらない日より多い状態が、少なくとも6ヵ月間にわたる。

B.その人は、その不安を抑制することが難しいと感じている。

C.その不安および心配は、以下の6つの症状のうち3つ(またはそれ以上)を伴っている(過去6ヵ月間、少なくとも数個の症状が、起こる日のほうが起こらない日より多い)。
注:子どもの場合は1項目だけが必要

1.落ち着きのなさ、緊張感、または神経の高ぶり
2.疲労しやすいこと
3.集中困難、または心が空白となること
4.易怒性
5.筋肉の緊張
6.睡眠障害(入眠または睡眠維持の困難、または、落ち着かず熟眠感のない睡眠)

D.その不安、心配、または身体症状が、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

E.その障害は、物質(例:乱用薬物、医薬品)または他の医学的疾患(例:甲状腺機能亢進症)の生理学的作用によるものではない。

F.その障害は他の精神疾患ではうまく説明されない[例:パニック症におけるパニック発作が起こることの不安または心配、社交不安症(社交恐怖)における否定的評価、強迫症における汚染または、他の強迫観念、分離不安症における愛着の対象からの分離、心的外傷後ストレス障害における外傷的出来事を思い出させるもの、神経性やせ症における体重が増加すること、身体症状における身体的訴え、醜形恐怖症における想像上の外見上の欠点や知覚、病気不安症における深刻な病気をもつこと、または統合失調症または妄想性障害における妄想的信念の内容に関する不安または心配]。

(引用)American Psychiatric Association. Generalized Anxiety Disorder. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (DSM-5), 5th ed. Washington, DC: American Psychiatric Association, 2013:222-226.

治療法

全般性不安障害の治療法としては薬物療法と精神療法があります。
薬物療法としてはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)やベンゾジアゼピン系抗不安薬などがありますが、本邦で「全般性不安障害」に対する保険適応のある薬はありません。
最近では不安症状に対して漢方薬を処方することもあります。
精神療法としては支持的精神療法や認知行動療法などが有効ですが、自律訓練法や呼吸法などのリラクゼーション法が有効な場合もあります。