うつ病とは

「うつ病」については、みなさまも何となくイメージがわく疾患だと思います。たとえば、「元気がない」「気分が晴れない」「仕事がはかどらない」などの印象がおありでしょう。しかし、精神科医が「うつ病」を診断する際、実は明確な基準を参考にしています(うつ病の診断基準を参照)。このようにうつ症状に関わる症状が複数同時に存在し(症候群とよびます)、かつまとまった期間に(ほぼ)毎日これらの症状を認めるのが「うつ病」なのです。

うつ病の例

症例: 40歳 女性
家族歴: 母親がうつ病で精神科に通院していた。
病歴: 24歳で結婚し1児をもうける。出産後に気分の落ち込みを自覚していたが、しばらくすると改善したため周囲には相談しなかった。X-1年9月、高校に通う長女のイジメのことで悩むようになる。家族には「私がしっかりしていないから」と漏らしていた。同年秋頃から眠れなくなる。食欲もなくなり1ヶ月で3kgほど体重が減少した。X年1月、正月休み明けから仕事に行くことがつらくなり、遅刻・欠勤することが増えてきた。仕事上でもミスが増え、周囲からは「大丈夫か?」「一度専門家に診てもらっては?」と言われ当院を受診した。

【診断基準】
うつ病
DSMコード 296(ICDコード F32/F33)

以下の症状のうち5つまたはそれ以上が同じ2週間の間に存在し、病前の機能から変化を起こしているのであればうつ病と診断される。
これらの症状のうち少なくとも1つは(1)抑うつ気分、または(2)興味または喜びの喪失である。

(1)自分の言葉か、まわりから観察されるほとんど毎日の抑うつ気分
(2)ほとんど毎日の喜びの著しい減退
(3)著しい体重の減少、あるいは体重増加、ほとんど毎日の食欲の減退または増加
(4)ほとんど毎日の不眠または過眠
(5)ほとんど毎日の精神運動性の焦燥または制止(他者によって観察可能)
(6)ほとんど毎日の易疲労性、または気力の減退
(7)ほとんど毎日の無価値観、または過剰であるか不適切な罪責感
(8)思考力や集中力の減退、または決断困難がほとんど毎日
(9)死についての反復思考、反復的な自殺念慮、または自殺企図

(引用)American Psychiatric Association. Major Depressive Disorder. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (DSM-5), 5th ed. Washington, DC: American Psychiatric Association, 2013:160-168.

治療法

うつ病の治療法としては、1.精神療法、2.薬物療法、3.認知行動療法があります。
薬物療法はSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ剤によって治療することが多いのですが、軽症のうつ病の場合はプラセボ(偽薬)とほぼ効果が変わらないため、精神療法や認知行動療法を中心で治療を行います。
また生活習慣を見直すことでうつ病の症状が改善することもありますので、主治医には症状だけでなく生活状況も詳しく説明するとよいでしょう。
うつ病を治す生活習慣については、またの機会にご説明しましょう。