双極性障害とは

双極性障害とは、「元気が良すぎて困る状態(躁状態)」と「元気がでなくて困る状態(うつ状態)」を繰り返す疾患です。
「元気がでなくて困る状態」は「うつ病について」で解説していますので、ここでは主に「躁状態(躁病)」についてご紹介します。

躁うつ病の例

症例: 30歳 男性
家族歴: 親戚にうつ病・躁うつ病の治療を受けた人がいる。
病歴: 20代の頃より気分の落ち込みがあり、近くの精神科クリニックに通院していた。しかし、あまり効果を感じなかったため1年ほどで通院を中断した。30歳のころ勤める会社でプロジェクトリーダーを任される。会社の期待に応えようと今まで以上に仕事を頑張った。だんだんと頭が冴え、プロジェクトに対するアイデアも泉のように湧いてた。口調は早口で多弁になり、周囲のスタッフに対して些細なことで怒鳴るなど怒りっぽくなった。同僚だけでなく取引先に対しても横柄で傲慢な態度を取るようになったため、会社にクレームの電話がかかるようになった。心配した同僚と家族と共に当院を受診したが、本人は「どこも悪くない。」と主張する。

【診断基準】
双極性障害/躁うつ
DSMコード 296(ICDコード F32)

ここでは「躁病エピソード」についてのみご紹介します。
少なくとも1週間ほぼ毎日、異常にかつ持続的に気分が高揚し、開放的または易怒的となる。加えて異常にかつ持続的に活動性が亢進する。この間、以下7つの症状のうち3つ以上を認める。

1.自尊心の肥大、または誇大
2.睡眠欲求の減少
3.多弁、喋り続けようとする切迫感
4.観念奔逸、いくつもの考えがせめぎ合う体験
5.注意散漫
6.目標指向性の活動の増加、精神運動焦燥
7.困った結果になる可能性の高い活動に熱中すること

(引用)American Psychiatric Association. Bipolar I Disorder. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (DSM-5), 5th ed. Washington, DC: American Psychiatric Association, 2013:123-124.

治療法

統合失調症と同様に基本的には薬物療法が中心となります。
双極性障害の治療には気分安定薬と呼ばれる薬がしばしば処方されます。
具体的には炭酸リチウム、バルプロ酸、カルバマゼピン、ラモトルギンなどが有効です。
また統合失調症で使用される、オランザピン、クエチアピン、アリピプラゾール、リスペリドン、ルラシドンなども有効です。
薬物療法も重要ですが、双極性障害の患者さんにとって大切なのは「自分が病気である」という認識(病識)です。
双極性障害、とくに躁状態の患者さんはとても気分が良いので病識は欠如し「これが本来の自分」と思い込み治療を受けたがりません。しかし【躁うつ病の例】でも紹介しましたが、躁状態の気分高揚、尊大な態度は社会的信用を失わせるため、自分がやらかしたことを後悔する患者さんも多いです。
患者さん自身が「躁状態」になりそうな兆候に気づき、早めに主治医に相談することが大切なのです。